ご無沙汰。5月27日にスタートした音楽配信サービス「AWA」。すでに話題になっておりますがエイベックス・デジタルとサイバーエージェントが共同出資したAWA株式会社が手がけています。今回提供されたのはiOS/Android向けアプリですが、PC/タブレットはもちろん、ウェアラブル、自動車などにも拡充させていくとのことです。
Come In Come Outではこの分野のサービス/テクノロジについて度々触れており、そこには音楽ファンやアーティストにもこういったサービスに触れ、考える機会をもって欲しいという気持ちがあります。世界に目を向けるとSpotify、Pandora、Rdio、Deezerといったビッグプレイヤーがおりますが、日本は蚊帳の外状態でして、色々あるらしいけどそもそも選択肢が与えられていないという悲しい状況です。ありがとう世界。
日本にもdヒッツ/dミュージックとかうたパスとかKKBOXとかUULAとかレコチョク Bestなどがあり、キャリアが絡んでるサービスはまぁまぁなユーザーがいる模様ですが、あんまり話題に上がってこない印象がありました。しかし今回のAWAを始め、動きを見せているLINE MUSICなどコミュニケーションツールになることでスケールしそうなプレイヤーたちが参入してくることで、盛り上がってきそうです。じゃあちょっと見ていきましょうか。人知れずお亡くなりになったMusic Unlimitedさんの弔い合戦や、気合入れような。
参考
エイベックスとサイバーエージェントが手掛ける サブスクリプション型音楽配信サービス「AWA」の正式提供を開始 | 株式会社サイバーエージェント
「LINE MUSIC」が謎のティザーサイトを公開中!サービスがちら見できるムービーも。サプライズで開始迫る?! | All Digital Music
価格
AWAは完全に有料のサービスでして、月額360円(税込)のLiteと月額1080円(税込)のPremiumの2つのプランが用意されています。使用開始から90日間はPremiumプランが無料/登録不要で利用可能です。オンデマンド視聴や、プレイリストの作成/公開はPremiumプランでしかできません。メインコンテンツであるプレイリストの作成機能が高い方のプランという強気な姿勢は、やはりヤンキー社長の敏腕によるものでしょうか。恐らくユーザーにはPremium限定機能のことが伝わっていないと思いますので、3ヶ月後が楽しみですね。とりあえず無料なので一度触ってみるのが良いと思います。日本ではフリーミアムができないので、こうするしかないんでしょうね。
楽曲数
スタート時点で100万曲、6000以上のプレイリストが用意されております。既存サービスに比べると楽曲数そのものは少ないのですが、AWAはプレイリストで聴くのが主な体験となっておりまして、それが6000以上あるというのは謎の凄みがあります。ユーザーの聴取行動を分析してレコメンドもしてくれるようですよ。この手のレコメンドするラジオみたいなサービス、日本のはクソみたいのしかないので期待したい部分ですね。
現時点で23のレーベルが参加しており、2015年末までに約500万曲、2016年末までに1000万曲の提供を見込んでいるとのことです。楽曲数の多さが利用の動機になるわけではありませんが、この手のサービスは聴きたい曲がないとすぐに離脱してしまい、結局楽曲数がないと話にならないので、早めに充実してくれることを期待したいですね。がんばれよ。まぁそのあたりはさすがにエイベックスとサイバーのタッグですし、やっぱヤンキーってすげえってことで、どうにかなるんでしょうな。
音質
iPhoneしか手元にないので、Androidは分かりませんが、音質はLow(64kbps)/Normal(96kbps)/High(128kbps)の3種類が用意されています。Wi-Fi接続時は320kbpsが選択できるようになっています。これは良いですね。だいたい何がクソって7G制限ですよ。なにあれ。アレのせいでストリーミング系を使うのを躊躇しますね?頼むぜ、ヤンキーたち!
収益分配
気になるのは収益分配です。そこを最もクリアにしているのがSpotifyであり、実際の金額云々は置いておいて、オープンにしていく姿勢はとても評価できますよね。ゆくゆくはTunecoreなどから配信された楽曲も入ってくるのでしょうし……入ってこないのかな……知らんけど、オープンであって欲しいですね。ヤンキーだしやっぱ人情深いやろ。
参考
SpotifyのCEOダニエル・エク、テイラー・スウィフトの楽曲引き下げや音楽業界の”経済モデル”について声明文を発表【全訳公開】 | All Digital Music
ミュージシャンに見て欲しい!音楽ストリーミング「 Spotify 」、支払う楽曲使用料の仕組みを説明するサイトをオープン | All Digital MUsic
デザイン
ヤンキーのわりに弱気のフォントウェイトですが、全体的によく作りこまれているのが伝わってきますね。
音楽配信サービスは往々にして機能が多くなることでUIが複雑になりがちで、その点ではSpotifyも素晴らしいとは言えず、KKBOXなんかはタップできるカオス状態です。AWAはディスカバリー=ホームに関しては不自由ないですね。そこに貢献しているのは横スワイプでのコンテンツ切り替えでして、メニューでコンテンツを切り替えるというのはエンゲージメントが下がるのが常ですから良い判断です。ただし、メニューも混在しており、階層と現在地が分かりにくく何がなんやらでして全体を見ると弾けぎみです。例えば、左上は「AWA」ではなく、「ホーム」にするべきではないでしょうか。見た目の綺麗さが機能するのは最初だけなのでもうちょい冷静になっていただきたく存じます。
プレイリストが作りづらいと感じたのですが、実際にプレイリスト作る人は全体の1割2割くらいだと思うので、多少面倒でも良いのかもしれません。テストしてるでしょうし、ここでの指摘は見当違いかもしれないですが、タブバーに「ホーム」「検索」「作る」「通知」「自分」として、ナビバーに「プレイヤー」を入れるのが分かりやすいとは思います。ダサいかもしれんがな。
「プレイリストを作る動機を生み出す」「プレイリストを作ったことに対するフィードバック」の設計はまだまだ検討のしがいがありそうです。これはとても難しい部分です。そもそもプレイリストを作るってすごく面倒な行為なので、あんまりアプリ向きじゃないとさえ思うわけですが、ここをクリエイティブに解決できるとしたらとても可能性を感じますよね。まるでInstagramのように美しく、シェアしたくなる、イイね!したくなるようなプレイリストのフォーマットやフォトアルバムアプリのような直感的なデザインが実現すれば良いですね。
「プレイリストを作る」と「プレイリストを聴く」体験は切り離して別アプリにするというのも一つの解決策ではありますな。
ディスカバリーの設計も重要でして、情報がありすぎると、同じものしか聴かなくなる、みんなが聴いていてるもので良いとなるので、どうやってそこをリフレッシュさせていくか。デザイナーとしては色々考えていきたいですぞ。でも今は花澤香菜のアルバムが最高なのでどうでもいいけどな。
海外の不良カルチャーやカウンターカルチャーが先鋭的若者文化・風俗として日本に持ち込まれても、ただそれだけでは日本に浸透しない。“メジャーなもの”として一般に認識されるためには、とりあえず一旦「ヤンキーフィルター」なるものを通過しなきゃならないのである。ハウス+テクノに「ヤンキーフィルター」を通過させて広く一般に浸透させたのがエイベックスと小室哲哉。
エイベックスの主な仕事は、ハウス、テクノ、ヒップホップ、レゲエ、クラブミュージック全般等の輸入音楽にヤンキーフィルターをかけ、日本に浸透しやすい形に「翻訳」することなのだ。
結論:スケールさせるために必要なのはヤンキーフィルター。
6月くらいに僕もアプリ出しますね。メジャープレイヤーのお陰でこっちのエッジが効いていくので、頑張ってくれよな。
ARRIVALSって呼んでるですが、もっと良い名前ないかしら。
過去記事も是非ご覧あれ。
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