Photo : Music Festival

イギリスでは新型コロナウイルスワクチンの接種者が国民の3割にあたる2000万人を超えた。ワクチン接種は昨年12月から始まっており、今年7月末までにイギリス国内の成人全員に1回目の接種を行う計画だ。

ボリス・ジョンソン首相は2月22日、ロックダウンを段階的に緩和する計画を発表した。その計画は4つの段階に分けられ、6月21日からの第4段階では社会的接触に関する制限が解除される可能性がある。

ライブミュージックやナイトクラブの再開はこの第4段階で検討される。もちろん日付は目安で、計画は状況とデータに基づいて遂行されるとしている。

活気づく音楽フェスシーン

この計画の発表によって、イギリスのライブミュージックシーンは俄然活気づいた。

世界最大級の音楽フェスGlastonbury Festivalが中止となり沈んでいたフェスシーンだが、イギリス政府の発表を受けて、7月の2000 Trees Festival、8月のReading & Leeds FestivalGreen Man Festivalは通常開催をアナウンス。Reading & Leedsのチケット10万枚はすでにソールドアウトした。

7月のWireless FestivalLatitude Festivalは詳細なアナウンスこそしていないが、主催者がNMEに対し、制限の解除が計画通りに進めば開催されると述べている。6月から9月に延期されているマンチェスターのParklifeの主催者も開催を確信していると語っている。

一方、Download Festivalは第4段階よりも早い6月上旬のため、中止を発表した。5月のThe Great Escapeはオンライン開催となっている。

計画が理想的に進行しても、リスクがなくなるわけではない。例えば、ワクチンの予防効果を十分に得るためには2回目の接種を行う必要がある。英政府は2回目の接種は12週間以内に行うとしているが、その12週間という接種間隔をめぐっては混乱が見られる。

またウイルスの変異などでパンデミックが再拡大することも考えられる。こういうした状況のなか、音楽業界団体のUK Musicは、政府の発表を評価しながらも6月と7月に大型イベントを開催するリスクは多くの主催者にとって大きすぎ、イベントが財政破綻しないための政府による保険を求めている。

独立フェスティバル協会(Association of Independent Festivals)は会員の92.5%が保険なしではイベントの開催ができないと述べている。

日本からの参加は難しい

確かにイギリス政府の計画が達成されれば、音楽フェスティバルは開催できるかもしれない。日本の音楽ファンは参加できるのだろうか。

現時点でイギリスは日本からの渡航者や日本人に対して入国に際して条件や行動制限措置を課している。

 直近10日間にアイルランド、チャネル諸島及びマン島を除く全ての国・地域から出発または経由した渡航者(英国在住者を含む。一部の免除対象者を除く。)がイングランドに到着する場合、旅行を開始する日の3日前以降における新型コロナウイルス検査の受検と、渡航前及び到着時における陰性証明書の提示が義務付けられる。陰性証明書を提示できない場合、渡航手段の利用を拒否される場合がある。

 また、事前にオンラインで連絡先等をフォーム(注)に登録(入国48時間前以降登録可能)の上、入国時に提示する必要がある。

 加えて、上記渡航者(一部の免除対象者を除く)は、10日間の自己隔離のほか、2021年2月15日以降、入国原則2日目と8日目の検査(自費)の受検が求められる。上記オンライン登録前に検査パッケージの予約を行い、予約番号をフォームに記入する必要がある。

 なお、入国から5日間経過以降、任意で検査を受けて陰性だった場合に、自己隔離を終了できる制度を選択可能。

 出発前検査、フォームへの登録、自己隔離、入国後検査に関する違反は、罰金、禁固又は双方の対象となり得る。

外務省 海外安全ホームページ

まずはこのような制限が必要なくなる状態になることが必須だ。日本ではまだ医療従事者への先行接種が始まったばかり。一般の人が摂取できるのは5月以降で、先行きは不透明だ。

もし渡航制限が解除され、ワクチンを2回摂取しても懸念は残る。

Wireless FestivalやDownload FestivalのオーガナイザーであるFestival Republicの代表は、フェスティバル参加にはワクチン接種証明書(いわゆるワクチンパスポート)か陰性証明が必要になるだろうと述べている。現状ワクチンパスポートの規格は国によってバラバラで足並みが揃っていない。会場で日本語のワクチン証明書を提示しても入場できるかどうかは怪しいだろう。

日本の音楽ファンがイギリスの音楽フェスティバルに参加するのはまだ先の話になりそうだ。

また日本のフェスシーン、特に洋楽プロモーターは大きな問題に直面している。以下の記事によると洋楽プロモーターは保証の対象外で、今後の存続が危ぶまれているという。

ちなみにアメリカでは9月にBonnarooThe Governors Ball、10月のAustin City Limits Festival、オーストラリアで11月にSplendour in the Grassが開催される。秋であればチャンスがあるのかもしれない。


新型コロナウイルスおよびワクチンについては厚生労働省のウェブサイトなど公的機関の情報をご覧ください。

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