7月26日(金)~28日(日)に新潟県湯沢町苗場スキー場で開催されたFUJI ROCK FESTIVAL ’13。金曜日のGreen StageヘッドライナーであるNine Inch Nailsのステージが全編YouTubeのフジテレビの公式YouTubeチャンネルで生配信された。
NINE INCH NAILSライブの模様をフル配信&放送決定!
ナイン・インチ・ネイルズ フジロックのライヴ・フルセット映像がYouTubeに
音楽ファンにとって、コーチェラやロラパルーザなど海外フェスティバルの生配信は今や恒例行事となっているなか、フジロックでは初の試みとなった今回。Nine Inch Nailsだけという探り探りの試みで、世界的に見れば小さな一歩にすぎないが、国内フェスティバルとしては大きな一歩だろう。
またSONIC MANIAとSUMMER SONICはWOWOWで生放送された。サマソニのほうはYouTubeでも配信していて、内容はダイジェスト。各アーティスト1曲ずつ放送という感じで、日本国内からの視聴は制限されていた。
サマソニの前日に千葉・QVCマリンフィールドで開催されたBUMP OF CHICKENの「ベストアルバム発売記念ライブ」ではYouTubeのBUMP OF CHICKENチャンネルで完全生配信された。これはGoogleが手掛ける、Google+とYouTubeを通してアーティストの新たな魅力に迫るファン参加型音楽プログラム「MUSIC FRIDAY on Google+ | YouTube」の特別編として行われたもの。
ここであらためて海外の事例を振り返ってみたい。以前「進化するコンサートの生配信」でご紹介したものあるが、コンサート擬似体験の未来を考える良き資料になるはずだ。
海外フェスティバルの配信事情
コーチェラ・フェスティバル
フェスティバルの生配信といえば世界最大級のフェスティバルのひとつ、コーチェラ・フェスティバル。ここ日本でもTwitterのトレンドに#coachellaが入るほどオンラインで盛り上がっていた。(Twitterのトレンドは1時間に2000ツイートほどあれば入るようである)
YouTubeでは3つのチャンネルでリアルタイム視聴が可能になっており、今年は生中継しながらアーカイブされ、いつでも好きなところに巻き戻して再生することができた。また360°を撮影した特別なビデオもしばらく公開されていた。高画質でハイクオリティなビデオで、将来的にリアルタイムでやってくるだろう。どうやらYouTubeの専門チームやT-mobileと組んで配信していた様子。
グラストンベリー・フェスティバル
イングランド・ピルトンで1970年から行われているグラストンベリー・フェスティバルも世界最大級のフェスティバルのひとつ。2年ぶりの開催となった今年のヘッドライナーはArctic Monkeys、The Rolling Stones、Mumford & Sons。
BBCがテレビとウェブで生配信をしており、Arctic Monkeysはピーク時で140万人、The Rolling Stonesは250万人もの視聴者がいたという。BBCはオンラインで特設ページを開設し、120組以上、計250時間もの配信を行った。イギリスの公共放送局がフェスの生配信をマスメディアとネットで行うなんて日本では考えられない。英国では音楽そのものの立ち位置違うのだと実感させられる。
KROQ WEENIE ROAST
ライブストリーミング配信のなかでも2013年5月18日にカルフォルニアで開催されたTHE KROQ WEENIE ROASTは面白い事例だ。ロサンゼルス、カルフォルニアのラジオ局KROQの主催で年に一度6月の土曜行われるロックフェスで、今年は360°を映し出すカメラによる360°生配信を行なっていた。
拡大縮小、フルスクリーンでの閲覧が可能。カメラを動かすと一時的に画質が落ちる、重いなどまだ問題はいくつかありそうだが、革新的で面白かった。
360°配信と言うと国内ではBOOM BOOM SATELLITESの武道館ライブが記憶に新しい。
ちなみにだが、海外フェスティバルはソーシャルメディアでの情報発信も盛んである。例えばコーチェラ・フェスティバルはFacebook、Twitter、Google+、Tumblr、Foursquare、Instagramを。ロラパルーザはFacebook、Twitter、Tumblr、YouTube、Flickr、Instagramを活用している。コーチェラ、ロラパルーザ、グラストンベリーはスマートフォンアプリまでリリースしている。フェスティバルの魅力をオンラインでひきだすべく努力をしているようだ。ソーシャルメディアは放送と相性が良く、特にTwitterでは生配信が行われる期間中は非常に盛り上がる。オンラインでの疑似体験は様々なメディアを組み合わせて生み出されるものになっている。
コーチェラの例は昨年まとめた記事を見てみてほしい。
コーチェラ・フェスティバルに見るソーシャルメディア戦略(2012年)
コンサート擬似体験の未来
このように海外ではフェスの中継が広がりつつあり、日本でもクリエイティブな事例が存在している。映像のクオリティは今後どんどんあがり、コストは下がるだろう。さらに360度配信やバーチャルリアリティといった発展もありそうだ。フェスからの発信ではなく、オーディエンスから共有もさらに加速するだろう。コンサートの疑似体験は一つのメディアではなく、複数のメディアが組み合わることでその体験をつくっている。
このブログでは、オンラインでどのような擬似体験をさせ、体験を拡張させれば良いのか引き続き考え、発信していく。
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