今日のBGM。
Big Kids – I’m Bored

DVDリッピング違法化、違法ダウンロード刑事罰化や佐久間正英さんの「音楽家が音楽を諦める時」というエントリーもあり、ここのところ音楽産業についての記事やエントリーが多く書かれている。

僕自身はミュージシャンではないし、音楽産業に関わっている人間ではないが、フェスやライブは好きで良く行く。また、仕事でソーシャルメディアやウェブに関わっている。大学ではメディアを学んだ。今は仕事とは別に音楽関係のウェブサービスを作り始めている。

たいした背景ではないが、音楽産業について今とても関心がある。いままで「リッピング違法化、私的違法ダウンロード刑罰化、著作権法改正案が可決・成立」や「米コーチェラ・フェスティバルに見るソーシャルメディア戦略」などのエントリーを書いてきたが、今一度音楽産業とは何であったのか、音楽とは何か、現状と未来を再考してみたい。さんざん議論されたテーマであり、改めて僕が書く必要もないのだが、自分の知識の整理のためにしばらく連載してみようと思う。

いろいろと思うところはあるのだが、まずは最近音楽産業について書かれたエントリーや記事を見てみたい。

まずは佐久間正英さんの3つのエントリー。

音楽家が音楽を諦める時

昨夜の投稿の追加文

音楽における音情報

正解はないが不正解はある音作り。良い音というのは共通の感覚(普遍的な部分と時代・環境ともに変化する部分)で捉えられる。そのような良い音は音質やファイル形式には関係なく、気持ちのよい音のことである。そしてそのような良い音を探し、鳴らすためにはそれなりのコストがかかる。金とクオリティが比例してしまう。

音楽制作はデジタルデバイスの発達で容易になった。しかし、それで生の演奏に向きあえているのか、生の音を鳴らすことができるのか。本物の演奏に辿りつくことができるのか。本物の演奏をリスナーに届けることができるのか。

リスナーの音楽体験はコストのかからないものとなった。YouTubeで聴ける。本当の音を鳴らすには人間臭いコストがかかってしまう。このような表現は良くないかもしれないが、本当に良い物を作ろうとすると費用対効果が望めない。良い録音物、良い音探しを諦める・・・?もちろん金がなくたって良い音楽は作ることができる。それがプロであり、音楽家である。だが問題はそこではなく、

そういう音楽の作り方をする為の最低限の土壌がこの国にはもうあまり残っていない

という部分である。ここがこのエントリーの本題だと思う。ゆえに、

現在の状況、これからの時代を予想する限りその積み重ねた知識・経験は『伝承しようの無い』モノに過ぎなくなったと思う。これだけ長い時間を真剣に音楽に掛けて『伝承しようの無い』様なことしか出来なかったのかと思うと甚だ情けないし残念だ。

と語るのである。

前回のエントリーで紹介している、違法ダウンロード刑事罰化についての津田大介氏の意見もここにつながってくる。この中で違法DL刑事罰化に反対する津田氏は代替案として、以下のことを述べている。
参考:違法ダウンロード刑罰化への津田大介氏の国会参考人発言を書き起こしました

何かというと、文化予算を増やすことだと思うんですこれは。これしか無いと思います。
日本の文化予算がいくらかというと、だいたい文化庁の予算は1000億です。1000億なんですけど、なかなかやっぱりこれ、低いんですよね。これ諸外国に比べても全然低いです。
例えばじゃあ今コンテンツを輸出している、我々今音楽番組を観ると、CD屋行っても、韓国のK-POPがたくさんありますよね。K-POPはもう国策として輸出して、そして外貨を獲得している。
韓国の文化予算は今、去年いくらだというと、5000億です。日本の5倍かけてます。それだけ彼らは投資してそれを回収しようとして、日本に進出している。
ひるがえって日本の、じゃあ道路関係予算はいくらだと。今1兆4682億なわけですね。もう引くかどうかもわからないような高速道路というのは未だにやっぱり建設して、これ誰も利用しないだろみたいなところに2000億かけてやろうとか言ってるわけですよね。
その2000億とか止めて、なんか、文化庁の予算にちょっとでも回す、せめて、韓国ぐらい、5000億ぐらい回して、そこで業界を保護していく。
これ、刑事罰化をやって、多分売上伸びないって最悪ですよね。情報環境に対して悪影響があって、しかも音楽産業も伸びないなんていったら、これはもうある意味でいうと政治の不作為だと思います。
だから多分、これは本当に、この予算配分をどうしていくかということを考えるのがまさに政治家の先生のお仕事だと思いますし、僕は文化は保護されるべきだと思うし、そのためには文化庁の予算というのもきちんと、文化庁、庁ではなくコンテンツ省に上げようなんて議論もありますけど、そういうところも含めた議論をして頂きたいなと思います。

この国そのものがコンテンツを軽視している背景がある。日経ビジネスの記事(第1回 マーケティングは死んだのか)ではないが、マーケティングの見直しは企業に限ったことではなく、国についても言える。経済産業省がクールジャパンを進めているが、その前に世界に発信するそのコンテンツは良質なのか考えて欲しい。

良質なコンテンツ提供し続けなければ、注目を集めてもすぐに飽きられてしまう。既に日本のコンテンツは良質であるが、もうその質を維持できなくなっている。日本独自の本来は良質なコンテンツが、佐久間氏の言葉を借りるなら、「伝承しようのないもの」になってきている。ああ、これってコンテンツ・マーケティングとかインバウンド・マーケティングとかそういう話になってくるのかな。発信するのであれば、まず良質なコンテンツを作ることだ。

いや、まて、その前にこの国は、この国のレコード会社はどうなりたいのだろう。行き当たりばったりすぎる。ゴールを設定するのはマーケティングやブランディングにおいて当たり前のこと。世界情勢が日々変化し、デジタル化は凄まじい早さで進んでいるから予測ができないと言い出すのだろうか。本当は僕が知らないだけで、ゴールはちゃんと設定されているのかもしれない。でもゴールを多くの人が知らない。知らないのでは存在していないのと同じこと。

まとめよう。問題はゴールが見えないこと、コンテンツを軽視していること。

コンテンツの軽視には、当事者であるアーティストの意見が届いてこないことも含まれる。当事者であるアーティストが何を考えているのか全く分からない。本当は発信しているのかもしれない。でも届いていない。そりゃあもちろんアーティストはコンテンツ作りに集中して欲しい。自分の世界を表現することに注力して欲しい。でも今はそれだけではいけない状況なのだ。当事者も発信する必要がある時期なのだ。
その点ですばらしいのはnothing ever lastsというバンドだ。

参考:“楽曲は無料、ライブも無料”の時代を–日本の音楽業界に挑む米国人シンガー

発信し、アクションする。しかし、このバンドもBLOGOSに取り上げられなかったら、失礼だが、ここまで認知度は上がらなかった(ただネルソン氏はYouTubeの人気ユーザーであったため、ネットユーザーの認知度は高いだろう)。当事者が実際に意見発信をすることは結構難しい。今はTwitter・FacebookのSNSで簡単に情報発信ができると言っても、フォロワーがいなければ意味がなく、フォロワーを獲得するまでに時間もかかる。だったらこのように影響力のあるメディアが取り上げれば良いのだ。声をすくいあげ、発信することで、アーティストにコンテンツ制作に集中してもらう。もちろん代弁してる風で自分の意見を書きまくるメディアは必要ない。当事者がどう思って、どうしたいかだ。

っていうかそれって音楽誌の仕事じゃないのか。と思ったが、音楽誌は音楽誌で終わっているから音楽の領域を出ず、クラスタやトライブから先に伝達しきれないのである。そのうえ、インタビューを受けるためにアーティスト側がお金を支払う。インタビュー記事は広告であり、ペイドメディアなのである。

BLOGOSのようなジャンルに偏らない総合的なメディアが発信する必要がある。なにもネットに限る必要もない。上記のnothing ever lastsの記事は別に朝日新聞にも読売新聞にもNHKの7時のニュースでも紹介されていいのである。ことの重要度は原発とも消費税ともそんなに変わらないのでなかろうか。それは言いすぎ?でもNHKはニュースウォッチ9でAKB48の総選挙を速報しているんだぜ、おい。

今の問題は”なぜ”生まれたのか、考えなおそう。アーティストが悪いとかレーベルが悪いとかJASRACが悪いとか、”誰”が悪いのかはどうでも良い。それぞれ当事者意識を持ち、ゴールを定める。その実現に向けてもっと考えろ、もっと発信しろ。金の話は一旦置いて、どこに向かいたいのかを考えよう。

以下は目についた音楽関連の記事。

Spotifyを追うソニー、日本皮切りに挽回なるか

Spotifyを追うソニー、日本皮切りに挽回なるか
ソニーの定額ストリーミングサービスMusic Unlimitedが日本でも開始。年内開始を目指すとのこと。日本ではレコチョクが月額1480円でスマートフォン向けにストリーミングサービスを展開している。Music Unlimitedが日本でどの価格帯で勝負してくるのか気になりますね。
このサービスは既に欧米を中心に16カ国で展開されている。有料プラン(月額9.99ポンドと3.99ポンド)のみで、”聴く”ことによりフォーカスしている。Android端末やiPhoneのほか、ブラビアやプレイステーション3といったソニー製品での利用も重視しているが、テレビやゲーム機よりもスマートフォンでの利用にフォーカスしたほうが身のためではなかろうか。(ウォークマンはどうなった・・・

またSpotifyはソーシャルメディアと連携し音楽をシェアできるが、ソニーは「ソーシャルネットワークなどへの対応は誰もが考えること。我々にとっても第2フェーズの開発テーマだ」とのこと。なぜ第2フェーズにしたのだろうか。

ネットにつながるステレオさえあれば、他なんにもいらないね。

っていうか最後にさらっと「Spotifyは現時点で具体的な日本参入時期は未定」と書かれている。。。
そういえばソニー関連だとこういう記事も→天下のソニーが本気出した“楽曲認識アプリ” 「TrackID」が100万DLを突破
アプリで本気だすのかよ。

スポティファイ(Spotify)がラジオ型の音楽配信サービスを開始し、パンドラ・メディアに挑戦
スポティファイ(Spotify)がラジオ型の音楽配信サービスを開始し、パンドラ・メディアに挑戦
アメリカでインターネットラジオの雄となったPandra。そこにSpotifyが参入しようとしている。伝統的な自動車のラジオはすでにPandra型のインターネットラジオに置き換わっており、その壁は高そうだ。

Anonymousが日本政府とレコード協会に宣戦布告

Anonymousが日本政府とレコード協会に“宣戦布告”違法ダウンロード刑事罰化に抗議
あらあら。霞ヶ関と霞ヶ浦を間違えて関係ないところに突撃する可愛さもあるAnonymous。さて、どうなるのでしょう。。。

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