東京・味の素スタジアムで2013年5月11、12日に開催が予定されていた大型音楽イベント<Tokyo Rocks 2013>の開催が中止となった。3月末に公式サイトで公開された「syazaibun.jpg」には中止とは書かれていなかったが、4月2日に更新され、「中止」と明記された。
<Tokyo Rocks 2013>は、矢野貴志プロデュース、大きすぎる会場、ラインナップ発表の延期など、開催について業界と音楽ファンの間で不安が広がっていた。ソーシャルメディアでは、SNSでの独特な言葉遣いから「ステイヤング」「ステヤン」と揶揄されている。
「TOKYO ROCKS」の運営者には、TOKYO FMなど大手メディア会社も名を連ねているが、中心を担うのはプロデューサーの矢野貴志氏が率いる「FAEC」というモバイルコンテンツ会社。前身のフェス「ROCKS TOKYO」でノウハウを蓄えたものとみられるが、今回のフェス開催には「危なっかしい」との声も出ているようだ。
出典:サイゾー
予定しておりましたアーティストの発表は、 諸事情により、4月初旬での発表となりました。 ご理解の程宜しくお願い致します。大変申し訳御座いませんでした。 TOKYO ROCKS 2013事務局
出典:Facebook
前身となった昨年のフェス<Rocks Tokyo>からどんなノウハウを得たのだろうか。<Rocks Tokyo>のオーガナイザーはMUSICAの鹿野淳。プロデューサーを務めたのは今回と同じく矢野貴志だ。
いろいろな噂や問いかけがあるので。
ROCKS TOKYOは三年間をもって終了しました。関係して頂いた皆様、来場してくれた皆様、ありがとうございました。
今後自分を含め、関係したみんなの手掛ける新しいイベントやフェスはROCKS TOKYOとは何ら関係ないものになります。— 鹿野 淳 (@sikappe) October 7, 2012
現時点でアナウンスされていたラインナップは以下のとおり。
5月11日:My Bloody Valentine、[Champagne]、andymori、Brian Jonestown Massacre、Droog
5月12日:blur、illion、Primal Scream、Carl Barat、MAN WITH A MISSION、back number
11日・12日 DJ Act:Tom Meighan from Kasabian、Alan McGee、Simon Taylor from TOMATO、This Feeling LONDON、Mark Beaumont NME
3月29日には業界関係者のあるツイートが<Tokyo Rocks 2013>のことなのではないかという憶測が広がっていた。
とあるフェス案件が中止か延期になるかもとの連絡。どちらにしてもマジか。という感じ。やっぱり自分が主催でないかぎり助けられる限界というものがあるよね。 — 森正志/モリマサシさん (@morimasashi) 2013年3月29日
ではTokyo Rocksは何が悪かったのか。すでに考察記事やツイートがあがっている。
加えて次々と追加されたアーティストが皆そろってここ数年でブレイクした邦楽の若手バンドばかりであった。タイムテーブルは結局発表されなかったがおそらく「邦楽→洋楽」という順番になる予定だったのだと思われる。90年代UKと若手邦楽バンドのファン層は殆ど被らないとみていい。邦楽バンドのファンはチケット代金も当フェスティバルと比較して格安のツアーの単独公演を見に行くのが現実だろう。
出典:naver
悲しいことだが、そもそもヘッドライナーに5万人収容のスタジアムを埋めるだけの集客力が無いと言わざるを得ない。彼らの全盛期は90年代だった。2008年に再結成したブラーはオリンピック関連イベントでキャパシティ5万を優に超すハイドパークをスペシャルズやニューオーダーらとともに満員にするなど、本国では華やかな勢いがあるが、日本での過去最大の公演は武道館留まりだった。マイブラッディヴァレンタインの22年ぶりの新作のセールスは日本では振っておらず、プライマルスクリームは頻繁に来日しているのでわざわざ当フェスを利用して観ようと思う人も少なかっただろう。イリオンの日本での人気はRADWIMPSを担保にかけても未知数だ。オアシス解散後の兄弟にしたってビートルズにしたって、ソロプロジェクトがバンドより人気が出るということはロックの歴史では殆ど起こっていないのである(ゴリラズは貴重な例外だ)。ちなみにRADWIMPSは現在も活動中である。バンドを出演させた方が賢明だった。
ファンが望んでいたのはサウンドではなく空虚さばかりが響くサッカー場だったのか、それとも、巨大とは言えないまでもそれなりに収容力のある、熱心なファンたちのみから発せられる熱気の密集した会場だったのか、答えは自明だ。出典:naver
「5月には新曲やるよ」くらいの口約束はあったんだろうけど、それを「世界で初めてマイブラの新曲が響きます」と独りよがりに断言した最初の時点で、このフェスの行く末は決まっていた。あと、アラン・マッギーが山師だということは、ある世代以上のUKロックファンにとっては常識
— uno koremasaさん (@uno_kore) 2013年3月31日
延期の原因がチケットの販売不振なのか、運営のいざこざなのかは分からない。味スタは大きすぎるが、いくら脈絡のないラインナップであってもこの並びならしっかりとした戦略と戦術があればチケットが売れる可能性もあった。チケットの一般販売が抽選など、よく分からないことが多すぎた。またプロモーションをウェブに限っていたこと、ソーシャルメディア運用がファン目線でなかったことは大きな原因だ。公式サイトはほぼ機能していない。TwitterはFacebookに動員する投稿ばかり、Facebookに来てみたらラインナップはすぐ見ることはできないし、ポエムが散らばっているだけだ。。「個性的なラインナップ」とか言っておきながら、邦バンドには全く触れていない。
運営とファンのテンションのギャップを感じずにはいられない。運営が何を発信したいかではなく、オーディエンスは何を求めているか、どうしたらフェス体験を拡張できるのかを考えてコンテンツを作っていって欲しかった。ソーシャルメディアの運用は本当に酷い。中止をアナウンスした投稿についたコメントを削除するという行為は全く援護できない。批判的な投稿で溢れてしまうのは当然だ。とにかく、アーティストとファンにしっかりとしたアフターケアをお願いしたい。今すべきことは説明だ。
チケットの払い戻しについては公式サイト、Facebookの投稿を確認していただきたい。
FOLLOW