世界最大の音楽ストリーミングサービスSpotify(スポティファイ)の話題が続いている。なんとSpotifyがSoundCloudの買収交渉を進めていると米フィナンシャル・タイムズが報道した。すでに交渉はかなり進展している模様だ。これについてVentureBeatは両社にコメントを求めたが、拒否されたと伝えている。
Spotify reportedly looking to buy SoundCloud | VentureBeat
The Spotify and SoundCloud deal may not happen, but it makes plenty of sense | recode
Spotify in Talks to Acquire SoundCloud (Report) | Variety
SoundCloudはアーティストからリスナーからも人気の音楽共有サービス。元々はSpotifyと同じくスウェーデンからプロジェクトがスタートし、クラブカルチャーの盛んなドイツ・ベルリンで2007年に創業、2008年のサービス開始から現在まで、アーティストの表現の場としてはもちろん、そのシェアのしやすさから音楽ブログなどネット上の音楽を取り巻くエコシステムの発展にも大きく貢献している。現在、メジャーアーティストを含む、1億3500万以上の楽曲がアップロードされている。月間アクティブユーザー数は1億7500万人。著作権がクリアされていない楽曲も多く、ここのところメジャーレーベルと揉めていたが、2016年に契約が完了した。
ソニーミュージックとSoundCloud、楽曲ライセンスで合意。定額制プラン開始に向けて全メジャーレーベルと契約が完了 | All Digital Music
SoundCloudとSony/ATVがヨーロッパの音楽著作権で合意、定額制サービスの拡大目指す | All Digital Music
SoundCloudは収益化のためのサブスクリプションプランとして、楽曲をアップロードするユーザー向けの「SoundCloud Pro」、リスナー向けの「SoundCloud Go」提供している。「SoundCloud Pro」は月額7ドル/15ドルで、利用制限のないアップロードやデータ分析が利用できる。「SoundCloud Go」は月額9.99ドルで、広告なしで1億3500万曲をフル再生、およびオフライン再生ができるというもの。しかし、無料ユーザーが多く、収益化に苦戦していると報じられてきた。売却を検討していると何度か噂されており、一時は売却先としてTwitterの名も上がった。サービスそのものは最高だが、マネタイズは難しく、たしかに売却は現実的な判断だ。
SoundCloud has been hemorrhaging money, future may be in doubt | Consequence of Sound
SoundCloud Becomes More Like Spotify and Every Other Music Streaming Service | Bloomberg
Spotifyは全世界で有料会員が4000万人を突破、2億ドル以上を売り上げている。日本でもサービスを開始したのは以前お伝えしたとおり。競合にあたるApple Musicの有料会員は1700万人と成長しているが、Spotifyの成長率はそれを上回っている。しかしライバルはApple Musicだけでなく、Google Play Music、YouTube、AmazonのPrime Music、Rdioを買収したPandoraと手強い企業が名を連ねており、Spotifyは攻めの姿勢を崩せない。Bloombergは今年7月、関係者の話として2017年にIPOを実施する計画だと伝えている。SoundCloudの買収が完了すれば、企業価値はさらに高まる。
Will a Spotify IPO Live Up to Its $8 Billion Valuation? | Bloomberg
SoundCloudには大手ストリーミングサービスとは違ったクリエイターとリスナーの素晴らしい関係が構築されている。ユーザー数、楽曲数のみならずポッドキャストといった豊富なコンテンツはたしかに魅力的だが、SoundCloudの本当の強みは周辺のコミュニティも含むクリエイティブのエコシステムとおおらかな空気感だ。そういったものを崩さずSpotifyと統合するのはハードだが、実現すれば音楽業界での存在感はさらに大きくなり、新たな音楽文化圏の誕生に貢献できるかもしれない。アーティストとリスナーにためになることが一番だ。
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