SoundCloudがファン中心の新たなロイヤリティ支払いモデル “Fan-powered royalties”(ファンによるロイヤリティ) を導入すると発表。

このファンによるロイヤルティは、SoundCloudで直接マネタイズしている独立系アーティストが支払いを受けるためのより公平で透明な方法だという。では一体どういったモデルなのか。SoundCloudは以下のように説明している。

ファンによるロイヤルティの下では、ファンの実際のリスニング習慣に基づいて報酬が支払われます。あなたの熱心なファンがあなたの音楽を聴く時間が長ければ長いほど、あなたはより多くの報酬を受け取ります。このモデルは、独立系アーティストに利益をもたらします。

Fan-powered Royalties FAQs

Spotifyのような音楽ストリーミングサービスは、ユーザーのサブスクリプションと広告収入をプールし、再生数のシェアに基づいてアーティストに支払われる比例配分モデルを採用している。これだとより人気のアーティストが、より支払いを受けることになる。強い人がより強くなるという、音楽ストリーミングサービスに限らずネットサービスによく見られるアーキテクチャだ。

一方今回SoundCloudは発表したモデルでは、ユーザーのサブスクリプションと広告収入はプールされず、実際に聴いたアーティストにそのまま分配される。

例えば1000円のサブスクリプションだとする。リスナーがVincent(カナダのプロデューサー)だけを聴いた場合、SoundCloudが手数料200円(適当です)を抜いて、800円がVincentに支払われることになる。特設ページには、Vincentは従来モデルでは月$120の支払いだったが、新モデルでは$600に上がると書かれている。

このモデルが成功すれば一般に知られていないアーティストやコミュニティでもサポートすることができる。つまりファンがアーティストのキャリアにおいて、より直接的な役割を果たすことになる。

こういったライセンスについて、音楽ストリーミングサービスが大手レーベルと合意を取ることは難しいことが知られている。しかしSoundCloudは約10万人のアーティストと直接関係を築いたことで実現が可能になった。

アーティストに支払われる合計金額はいくつかの要素に基づいて計算される。

  1. 特定の月の合計リスニング時間に対して、ファンがそのアーティストをどれだけ聴いているか
  2. ファンが消費した広告の数
  3. ファンがSoundCloud Go+を契約しているかどうか

SoundCloud Go+とは広告無し、オフラインでもSoundCloudのカタログ1億5000万曲以上を楽しむことができる有料プランのこと。もう少し安価なSoundCloud Goも存在しているが、いずれも日本からは利用できない。

ファンによるロイヤリティは、2021年4月より開始される。この支払いを受けるために、アーティスト向けのサブスクリプションプラン SoundCloudPro Unlimited あるいは ディストリビューションサービス Repost by SoundCloud、Repost Select に登録する必要がある。なお SoundCloudPro Unlimited に登録するにはアーティストは独立した状態、つまり、作品について全ての権利を所有していなければならない。

詳細はSoundCloudのウェブページを参照してください。

Deezerもユーザー中心支払いモデルを検討

新たなロイヤリティ支払いモデルにチャレンジをしているのはSoundCloudだけではない。フランス・パリを拠点とする音楽ストリーミングサービスのDeezerは “User-Centric Payment System” (UCPS、ユーザー中心の支払いシステム)を発表、「世界中のアーティストにとって業界をより公平にする」と主張している。仕組みはSoundCloudと同様。

Deezerはユーザー中心のアプローチは次の論理的なステップであり、不当な収益ギャップを減らし、ローカルのクリエイターやニッチなジャンルの成長をサポートすると説明。また不正アカウントによる再生をカウントしないとも述べている。

確かにこれらのモデルはシンプルで、クリアだ。ファンにとってもアーティストにとっても良いように思える。しかも今に限って言えばライブができない。音楽配信は貴重な収入源だ。

このモデルについて慎重な考えも見られ、学術的な研究と話し合いが続いている。Deezerは2020年初頭からフランスでパイロットプログラムを開始する予定だったが、まだ始まっていない。

アーティストにとってもファンにとっても気持ちの良い形で次の時代に向かいたい。

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