柴さんがドリルスピンで 第55回:「聴き放題」だけでは音楽ストリーミングサービスが成功しない理由~「着うた」市場壊滅の本当の理由から、次世代音楽配信サービスの「成功モデル」を探る~ というコラムを寄稿していたので乗っかります。ちょっと長いので適当に読んでください。
BGMはこれで。
イングランドのウェストミッドランズ在住であるStephen Wilkinsonによるソロユニット、Bibio。5月にリリースされるニューアルバム『Silver Wilkinson』から「À tout à l’heure」が公開されました。
聴き放題はどうでもいい
ドリルスピンの記事に書かれているように、聴き放題であることは別に魅力ではないです。1500万曲だろうが、980円だろうが、そんなことは正直どうでも良い。そこを売りにする限り類似サービスの不毛な争いが続くだけで誰も救われない。
別の魅力…そのサービスを通して一体何が体験できるのか、どんな新しい価値を得られるのか、そこが最も重要なのは確か。Spotifyの話もよく聞くようになりました。年内に参入するとも言われています。だが今のままではパッとせず散っていくのではないでしょうか。以下は高野修平さんのブログ記事「それはコミュニケーションサービスか?音楽サービスか?」からの引用です。
この「それはコミュニケーションサービスなのか?音楽サービスなのか?」という問いはそのままターゲットをどこに設定しているのかにも大いに関わっている。
はっきり言うと、現時点で音楽サービスと括られるもの、ここでは、人と人とを媒介するコミュニケーションツールが「音楽」であると規定する。その人と人とを媒介するコミュニケーションツールが「音楽」のサービスは世の中の誰もが知っている「世の中ゴト」化には到達できないと思っている。
それは音楽好きの中で活用され、母数は多くはないかもしれないが、コアなファンを中心に狭く深く利用されるものになるだろう。
決してそれが間違っているとは思わない。
あくまで音楽好きのソーシャルグラフやインタレストグラフの中で楽しんでもらえることを前提とした音楽サービスならば、それは正解であり、一層、音楽を媒介として濃いコミュニケーションをサービスへ成長していってほしいなあと強く願っている。
重要なことは音楽に感心をもってもらう、機能やUIよりも日常の中に音楽のコンテクストを作ること、です。
音楽は魂だ、音楽は俺たちのものだレコード会社のものじゃない、ビジネスじゃない、ストリーミングサービスはロイヤリティが低い…とかそういうの今どうでも良いです。音楽に関わって飯を食っていきたいならお金を使ってもらわないといけません。市場を作らないといけません。No Music No Lifeなんてありえません。そりゃあ音楽は絶対なくならないけど、なくなったって死ぬわけじゃありません。無人島にCDをもっていっても聴けません。
飯食いたいなら市場作らないといけないんです。そして今それは小さくなってきている。
ロイヤリティについて簡単にこっちに書いたので触れません。
≫最近のトピック、違法DL減少、聴き放題サービスとロイヤリティに思うこと
あと最近胡散くさい音楽ビジネスコンサルみたいな奴をちょいちょい見ます。ブログはアメブロ、メルマガに動員、っていうかお前がマーケティングできてない、フォロワーはアフィリエイトばかり。気をつけてください。見つけたらネオヒルズにぶち込んでください。僕も大して変わらないけど。
スマートフォンの普及
柴さんの記事では着うた市場の話があったので、モバイル音楽市場云々の前に気になることが。ストリーミング系のサービスは基本的にPCかスマートフォンでの利用が想定されていますが、そもそもスマートフォンの普及率ってどれくらいなんでしょうか。あんまり音楽関係ないんだけど、これはあとで結構重要になってきそうです。
≫シェア60% -ガラケー、バカにされても根強い人気
という記事がありました。記事によればガラケーは62.3%の契約数があります。これは意外に思うのではないでしょうか。東京に住んでいると皆スマートフォンを利用しているように感じてしまいますが、スマートフォンはまだ37.7%の人しか利用していない…。
そこで思い出したのが、こちらの記事。
≫祝1000万人突破記念。日本のFacebookについて調べてみてびっくりしたこと
完結に言うとFacebookは東京在住のおっさんのSNSだよっていうことですね。おっさんが、とは言わないけどスマートフォンも似たような現象が起きてるんじゃないかと思いました。スマートフォンの利用者は都市圏、とくに東京圏に集中してるだろうな、と。 で調べて見たらありましたよ。
≫スマートフォン比率、東京圏では携帯電話全体の6割を超える
これは2011年のデータなので今は8割くらいいってるんじゃないでしょうか。知らんけど。とにかく東京圏に集中しているということですね。まぁ当たり前っちゃあ当たり前な気がします。ついでにFacebookのユーザーも調べました。広告を作成するときに調べられるんですよ。(厳密年齢ターゲット設定は無効で調べました。)
で、どうやら13,446,980人のFacebookユーザーがいるらしいです。ほんとかよ。
で、その13,446,980人のうち、
7,060,020人が男性。
6,230,440人が東京在住。854,900 人が大阪在住。
3,648,400 人が10代。3,334,720人が20代。3,929,320人が30代。2,684,740人が40代。
…あんまりちゃんと調べてませんが、東京に集中しているのは変わっていないですね。気がつけば10代のユーザーがすごく増え、おっさんのSNSというわけではなくなってきました。携帯電話をもつ高校生のうちスマートフォン利用者は60%を超えているらしいので、これから携帯電話をもつ人はスマートフォンになっていくのでしょう。スマートフォンのほうはおっさんの携帯電話にはなりそうもないです。スマートフォンとの相性が良いソーシャルメディア系のアプリのユーザーも増えそうです。
こちらも参考に ≫日本人が一番「チェックインしたくなる場所」はどこか。日本のFacebookの現況とともに。
東京に集中しているというのはTwitterも同じかもしれません。管理しているクライアントのサイトのアナリティクスを見たら、61.15%がTwitter経由で東京からでした。その方は所謂アルファツイッタラー的な方でして、すごいフォロワーいるんですよ。
ってことで、スマートフォンの利用率は東京圏がもっとも高い、若者のスマートフォン利用ソーシャルメディア利用が増えている、ソーシャルメディアは東京在住の人が多い、ということはざっくり見えてくるのではないでしょうか。ざっくりね。適当だけどね。若者のソーシャルメディア利用が増えたというのは、Facebookに若年層が増えたことからも分かりますが、LINEの躍進も大きいですね。
で、これからの市場を担うこの若年層に如何にして音楽に意識を向けてもらうか、お金を使ってもらうか、という話ですね。LINEユーザーの8割はスタンプ購入の経験なしというデータがありました。フリーミアムモデルですね。妥当な数字ですよね。他に何にお金使ってるんだろうね。ソーシャルゲーム?ホントかな?っていうかお金ないんじゃね。知らんけど。っていうか若者って括りが謎ですね。便利なので若者ってことにしちゃいます。まぁお金なくてもネットさえ繋がれば結構楽しいですからね。
レコチョクBest
レコチョクBestには結構可能性があるかもしれません。LISMO Unlimitedは誰は使ってるの?レコチョクplus+はカスって感じでしたけど、これは良いかもしれない。以下の2本の記事を読んだ感じだとレコチョクはしっかりと根本的な課題に向き合っていることが分かります。お前何様だよって感じだけどまぁ聞けよ。
≫邦楽「レコチョクBest」開始!“定額制”は音楽の聴き方を変えるか
≫日本人らしい視点で「音楽の記憶」を呼び覚ます サブスクリプションサービス「レコチョクBest」スタート
津田大介さんも著書『Tweet & Shout ニューインディペンデントの時代が始まる』の中で述べていますが、音楽配信がクラウド化していくのはもう止まらないです。音源はクラウドに置いておいて所有せずに再生権を購入する。所有したいものはダウンロード購入する。LTEも始まって時期的にはちょうど良いのではないでしょうか。ただしどんなに便利になっても音楽へ関心を向けてもらうことから始めないと市場の縮小は止まりません。
以下はMusicman-NETから引用。
やはり、お客様が音楽を聴かなくなっている、音楽にお金を払わなくなっていることに対して危機感を持っていました。これは新しい音楽の楽しみ方を提供しない限り、市場に限界感があると。今のままでは誰も飛びつかないし、音楽は聴き方の目新しさを提供しない限りは、よほどコアな音楽ファン以外はどんどん離れていくというのは自明の利ですから。
我々自身でサブスクリプションをやろうと思った背景には、SpotifyやPandoraなどのスマホ時代の新しい音楽サービスの存在がもちろんありましたし、お客様がいいなと思える新しい音楽サービスをきちんと提供することで市場を開拓していかないと、ますます音楽離れが加速すると思ったからなんですね。
はい。結局そこなんですよね。新しい市場を作るくらいの勢いで根本的な部分から考えて行かないと何やってもダメ。いくら優れたものがあると知っていても使おうと思う空気が出来上がっていない。
そんななかでレコチョクは「音楽は記憶だ」というコンセプトを打ち出しました。SpotifyやRdioが日本でどのような戦略をもち展開していくのか分かりませんが、現状のサービスをそのまま持ち込んでも絶対にコケます。それはもう文化レベルで欧米と日本では音楽の立ち位置が異なるので仕方ないと思います。特徴的な日本の文脈を考えてサービス設計をしなければいけません。
「音楽は記憶だ」というコンセプトは日本人のコンテクストに合うと思います。具体的に何ができるのか、いくらなのか、ではなく、記憶。コミュニケーションのキッカケとしての音楽。登録する際に生年月日を入力します。なんでこんな情報いるねん…と思っていたら「10代に聴いた名曲」というプレイリストがありました。個人的にはかすりもしないプレイリストだったけどね。楽しめる人も多いのではないでしょうか。
プレイリストは豊富に用意されています。こういったサービスは「使ってみたけど何を聴けばわからない」ということが結構ありますが、これだけプレイリストがあると楽です。「卒業ソング」や「さくらソング」、「高校野球シーズンに聴きたい曲」「定番カラオケ」「90年代ドラマ主題歌」「日本のアニメ映画」「主題歌Best」など記憶というコンセプトを感じさせるものから、時事的なものまで幅広い。
ざっと見た感じ、なんとなくおっさん向けなサービスだなと思いました。たしかに「音楽は記憶だ」というコンセプトは素晴らしいし、心に刺さります。切り口も良いと思います。ただそれがこれからの市場を育てていくかどうかはまだ分かりません。もともと音楽にお金を使う習慣があったは人は使ってくれるかもしれません。TSUTAYAで借りるより安い、CD買うより安い、しかも簡単だし。
でもそもそも音楽にお金を使わない人はどうやったって使わないのではないか。問題は彼らにどうやって使ってもらうのか。レコチョクBestをどうやって日常のコンテクストの中に組み込んでいくのかということ。音楽を聴く、音楽を語るということを日常的にするかということ。音楽を音楽の文脈で語る限り、既存の音楽好きしか集まらないのです。いかに日常にするか、それを使うことを普通にするかという話なのです。「音楽は記憶だ」は新しい楽しみかもしれませんが、実際それを求めている人はどれくらいいるのでしょうか。
レコチョクBestは使えば楽しいかもしれませんが、使うまでは特に…。「使うまで」つまりサービスを知って登録するまで…ここで音楽コミュニケーションというのが重要になってきます。後半に続く。
自分の場合、使ったら使ったで1時間くらい”上海ハニー”とか聴いちゃって「うっわなつかしい」「これが初音ミクかぁ」と思いながらザッピングして、1日経ったら普通にiPhoneに入ってる曲聴いてたよね。自分から音楽を掘っていくような人はSpotifyのほうが楽しめるかも。検索はイマイチだし、青春プレイバックは1日で完了してしまった…。ただライト層にとっては使いやすいのではないでしょうか。そういえばアプリを立ち上げるたびにログイン画面になるのは何なの。こちらが悪いのかな。
(2013/03/08追記)レコチョクの方からコメントをいただきました。
このサービスのコンセプトは「現在のレコチョクBEST」のコンセプトと思っていただいた方がよいかなと思っています。サービスは進化しコンセプトも変化してゆくものかと思います。「現在の音楽」はしみてゆくのに時間がかかりますが「記憶」の音楽はこんなサービスで簡単に聴けることで思い出とともによみかえりコミュニケーションの種となります。まずはこういう盛り上がり方をしたもらいないなと。で、もっと音楽を日常生活に浸透させるしかけはこれを皮切りにいろいろ仕込んでいこうと思います。
おっしゃる通り、コンセプトは変化していくもの。戦略をもち、第一段階の戦術として「音楽は記憶だ」というコンセプトがあるのだと思います。乱立しているサブスクリプションサービスの中でもっとも日本での可能性を感じさせるのがレコチョクBestです。とても期待しております!
FarRao
FarRaoというインターネットラジオが最近スタートしました。ぶっちゃけ、誰も知らないと思います。
≫「FaRao」から新しいアーティストを輩出したい 日本初 メジャーレコード会社の楽曲が聴き放題のインターネットラジオ「FaRao」
ちょっと引用します。
例えば音楽もアーティストが単独で出ていっても、結局顔と楽曲が一致しない限り、オンデマンドというか指名買いの可能性は低いんです。でも、アジアのアニメが大好きな10代の子たちに「J-POP&アニメチャンネル聴けるよ」と言えば、聴いてみたいと思うはずなんです。僕らも「ブラジルの最新ヒットチャートってどんななんだろう?」とか思いますけど、今現在のブラジルのアーティストなんてほとんど知らないですし、曲も知らないんですよね。
YouTubeで聴いてるんじゃない?ブラジルのヒットチャート気にする人ってどれくらいいるの?
ええ。そういう意味で言うと、最初は100万曲もの楽曲の中からできるだけ自分に合う楽曲を再生して精度の高い出会いを提供し、楽曲を好きになってもらって指定して買う、というようなストーリーを作っていきたいなという想いがありました。
ちょっと何言ってるかわかんない。そもそも自分に合う曲に出会いたい人ってどれくらいいるのだろうか。これは無理なんでねえか。文句しか出てこない。使おうという気にならない。
なんか違うんだよね。極端な例えなんだけど、西野カナが聴きたいのであってそれに似たアーティストなんて聴きたくないみたな感じしませんか?西野カナの音楽というか西野カナに共感しているのであって、似てるから何だよ、みたいな。これもオススメ!で聴く人って多くない気がします。そもそもレコメンドって音楽を掘っていくような人にしか効かない。感覚なんで実態は知らん。
こういう話もありましたね。業界的には超ヤバイと思います。
≫音楽ダウンロードの利用に関するアンケート調査(第5回)
≫CD等による音楽鑑賞の行動者率と若者のCD、音楽離れについて
まず音楽に関心をもってもらわないといけません。音楽を聴く、音楽を語るということを日常的にしてもらわなければなりません。音楽離れはマズイです。超マズイです。
繰り返しますが、音楽を音楽の文脈で語る限り、既存の音楽好きしか集まらないのです。いかに音楽体験を日常にするか、それを使うことを普通にするか、音楽好きを増やすかという話なのです。別に良いなら良いけどね。では次に音楽コミュニケーションについて考えていきます。
音楽コミュニケーションを発生させるために
以下Musicman-NETから引用。
聴いている曲をTwitterやFacebook、mixiに投稿する機能を付けています。プレイリストの共有に関しても、いずれ必要かなと思っていますが、その前段階として、いくつか仕掛けが必要だと思っているんですね。一度、アンケートでユーザーにプレイリスト共有サービスについてどう思うか聞いてみたんですが、そうしたら一言「いらない」と言われて終わってしまったんですよ(笑)。つまり受け取る方はプレイリストを押し付けられることをあまり嬉しいこととは思っていないんですね。これは結構重要なことだと思っていて、何か仕掛けがないとプレイリストの共有は迷惑でしかないんですね。
はい。ここね。「いらない」当たり前ですね。お前の聴いている音楽なんぞどうでもええわ。でもこっちはシェアしたいんじゃボケみたいな。
レコチョクBestには聴いている曲をTwitterやFacebook、mixiに投稿する機能が付いています。っていうか今はどんなサービスでもTwitter・Facebookへの投稿はできます。これはソーシャル化する機能ではありますが、レコチョクBest自体はソーシャルメディアではないですね。SpotifyはFacebookでログインできますが、Spotifyのソーシャルメディア的な機能はFacebookに基づくものです。SpotifyをソーシャルメディアにしているのはFacebookであって、Spotifyではない。そういうことにします。
これはリクルートのATTACCA。
音楽サービスに限らず、最近のウェブサービスはとりあえずログインしてフォローして〜とかソーシャルボタンがあって〜というのが当たり前になっています。それは一体何のためにソーシャルメディアにするのか、なぜソーシャルメディアで露出をするのかをしっかり考えないといけない。
そもそもレコチョクBestが…レコチョクの話ばっかりしてますけども、…どういった音楽コミュニケーションを目指しているのか分かりませんので何とも言えませんが、共有したところで聴かれないと意味ないわけです。そこからコミュニケーションが発生しないと意味がない(感情論)。
では一体どういった音楽コミュニケーションをして貰いたいのか、という話。柴さんの記事から引用。
「そもそも、着うたは“音楽を販売するサービス”ではなかったから」
着うたは、そもそも“音楽”(=コンテンツ)を売るのではなく、“会話のきっかけ”(=コミュニケーションツール)を売るサービスだった。だからこそ、他のツールに駆逐されたことで、着うた市場が壊滅した。それが、僕の見方だ。
ニコニコ動画を運営するドワンゴの杉本誠司社長に以前インタビューで話を聞く機会があったのだが、そこでの話も、このことを裏付けている。杉本社長はこう語っていた。
「もともとドワンゴグループは、着うたや着メロのようなモバイルのコンテンツを配信する事業を展開していましたが、それも単なる音楽の販売とは位置付けていなかった。僕らは、着うたや着メロというのを、買った人とそれを聴かせた相手の間に会話が生まれるきっかけになるサービスとしてイメージしていた。そういうサービスに人は帰属するし、依存するということを考えていた」 (『別冊カドカワ「総力特集 ニコニコ動画」 杉本誠司氏インタビューより』)
着うたを買っていたユーザーは、音楽ではなく、コミュニケーションツールを買っていた。そう考えると、「音質も悪いのに値段が高い」モノがこれだけ売れた理由も見えてくる。「ねえ、これ知ってる?」という会話のきっかけになるものとして、音楽を購入していたのだ。
着うたを買った経験のない世代の方でも、記憶を遡れば、それと本質的に同じ行動をした人は多いんじゃないかと思う。それは、かつてバーやボウリング場にあったジュークボックス。そこに100円を入れると、お気に入りの曲を友達に聴かせることができる。僕が中学生のときも、なけなしのお小遣いをそこに使った思い出がある。決してその曲が手元に残るわけではないのに、ジュース1本分のお金を払っていいと思えた。あのときに払った100円は楽曲コンテンツの値段ではなくて、それがもたらす「コミュニケーションのきっかけ」への対価だった。
なるほどね。思い返せば、確かに着うたというのはリアルでのコミュニケーションツールのひとつだったように思います。友達同士で再生して、オススメあった記憶があります。ちゃんとお金払って買った覚えないけどね。ごめんね。今はちゃんと買ってるから許して。高いもん。500円ってバカだろふざけんな。
で、話を戻して。今はソーシャルメディア(特にTwitter、Facebook、LINE)がリアルの延長であり、日常を表していると言って良いのではないでしょうか。たくさんの人がいるし使わない手はないですよね。「ねぇ、これ知ってる?」をウェブ上でできるわけです。今までにない「音楽によるコミュニケーション体験」ができるかもしれないわけです。
1. ユーザーとユーザーが音楽を通じてコミュニケーションする環境、「ねえ、これ知ってる?」という会話のきっかけになる機能が、サービスの中に内包されている。
2. そのために、無料でユーザーを集めて有料へと誘導するフリーミアムのモデルが構築されている。
3. 単なるジャンル別や年代別のリコメンドではなく、人を通じて新しい音楽と出会うことのできるメディアとしての機能を備えている。
僕は今のところ、この3点がサブスクリプション型音楽サービスの「成功モデル」の条件だと考えている。そして、そういうサービスが普及して根付けば、音楽のシーンやカルチャー自体も大きく変わると思っている。
と柴さんは書いています。おっしゃるとおりです。人は一番の音楽メディアなのです。
しかし音楽サービスである以上、音楽好きが集まるわけですが、キャズムは越えられないのです。音楽コミュニケーションをアクティブに行うモチベーションなんてありません。音楽に特化する以上、音楽の議題しかそこにはないのです。そんなモチベーションありますか?ないです。なので音楽サービスがそのものが日常になるのはとりあえず諦めましょう。
じゃあどうするかと言ったらウェブ上で日常を表しているメディアに露出をしていく、音楽の話題を提供していくというのは一つの手です。しかし単純にシェアしてもらってもかすりもしない。
以前、音楽SNSって音楽に特化してるからつまらないんじゃね?でも書いたように他人の趣味なんてどうでも良いんです。リアルだったら話は聞きます。リアルだったら一方的にですが、まず聴かせることができるわけです。
ウェブ上でまで興味のない話は聞きたくないです。SNS疲れってそれです。しかもストリーミングサービスはシェアされても会員登録しないと聴けないことが多いので心折れます。YouTubeで良いです。ワンクリックですから。
世の中ゴト化されていない話題はインタレストグラフじゃないとつまらないんですね。ソーシャルグラフの中でも好きなものが同じつながり、興味関心が同じつながり。それが形成されていないと「ねぇ、これ知ってる?」はウェブの藻屑と消えます。例えリアルの友人だとしても。こうして蛸壺化が始まります。でもそっちのほうが楽しいんですね。音楽の話題ってそれほど一般的じゃないんです。そういう空気が今はないですし、音楽も多様化しています。
余談ですが、今僕らが作っている音楽SNS的なサービスはその点を諦めました。キャズムを越えようと思っていません。コアファンに使ってもらう、インタレストグラフを形成する、島宇宙だらけ。ターゲットはすでに他のソーシャルメディアでインタレストグラフが形成されている、音楽ブログを書いているような方です。音楽クラスタの方々です。さらに言うと東京在住かなと。重要な要素ではありませんが、東京はライブが多いですし、スマートフォンの所有率も高いからです。もっとも音楽コミュニケーションが活発に行われているであろう都市だからです。
キャズムを超えない、既存の音楽ファンだけに使ってもらう。それで良いなら多少楽かもわかりません。僕はそっちのほうが楽しいと思いますし、音楽業界なんて関係ないので楽しいと思うことをやっていきます。ファンによるファンの為になるものを。
でもそれでは未来につながっていかないかもしれない。音楽にアクティブに関心をもつ人が増えていかないかもしれない。これは音楽ファンとしては残念なことです。外タレなんて東京オンリー、フェスオンリーです。寂しいです。
グランドデザインを描く
新東京大楽【第3期】第3回でミュージシャン、クリエイターが継続的な収益・コミュニティを実現するウェブサービス「hopp」を運営されているカズワタベさんと僕とで音楽サービスの話をしたのですが、音楽サービスが抱えている問題というのは音楽サービスだけの問題じゃないんですね。音楽に関わる人がみんなで考えないといけない問題なのです。
どうやって音楽に関心をもってもらうか、お金を使ってもらうか。
そこだけです。もちろん素晴らしい楽曲、優れた機能を実装したサービスであることは当然ですが、その前にもっと根本的な部分から始めないといけないのです。音楽は数ある娯楽の一つに埋もれてしまいました。それで良いなら良いですけど、音楽好きとしてはあんまり楽しくないです。もっとたくさんに人に音楽を語って欲しいと思います。こういうとミサイルが飛んできます。音楽の話してないとか、金がどうとか。うるせえバカ。別にお金は卑しいもんじゃないだろ。米とか野菜でも別にいいよ。
音楽に関心をもってもらうという目標なくして手段に気を取られるとその場しのぎにしかなりません。どういう状況を目指すのか、というのは統一したほうが良いと思います。今闘ってる場合じゃない気がするんですよね。理念なき経営みたいばもんですね。別に楽曲を買ってもらえという話ではない。音楽に関心をもってもらえ、というだけ。マネタイズ以前の問題です。でもマネタイズしないとミュージシャンが食っていけませんよね。食いたい人は、だけど。
じゃあその空気を作るためにはどうしたら良いのか、という具体的な話は今後書いていこうと思います。が、トライバルメディアハウスのコミュニケーションプランナーで、「音楽の明日を鳴らす」の著者でもある高野修平さんのブログがだいたいそんな感じの話なのでそちらをご覧になったほうがよろしいかと。たぶん。
2013/03/10 追記
お金がなくても音楽は聴けるし、音楽は作れます。それはそれでどんどんやっていって欲しいと思います。本当の音楽好きだけで盛り上がるのも良いと思います。ただもっとその楽しみを伝えていきたいということを述べたかったのです。
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