(2013年1月31日 追記)

2012年はSpotifyやRdio、Pandoraの台頭と海外音楽サービスは盛り上がりを見せていました。その動向はジェイ・コウガミさんのブログや彼がドリルスピンに寄稿した世界で拡大し続ける、音楽ストリーミング・サービス最新情報が詳しいので是非そちらをご覧ください。

日本でもMusicman-NETの特別連載企画『未来は音楽が連れてくる』がソーシャルメディア上で多数シェアされたり、音楽シーンの現在を感じ未来を考えるカンファレンス「YOAKE」が開催されるなど国内の音楽ビジネスにも動きが見えてきました。武雄市の樋渡市長がSpotifyという日本で利用できないはずの音楽配信サービスを裏サイトを使って利用し他者にも勧めている件など香ばしい話題もありましたね(その件に関してSpotifyを日本で聴いた場合の違法性についてという大変勉強になるエントリーが書かれております)。

海外ストリーミングサービスの上陸

Spotify and Rdio Expected to Launch in Japan in Coming Months (Report)

Billboardに次のような記事が出ていました。
Spotify and Rdio Expected to Launch in Japan in Coming Months (Report)

今後数ヶ月のうちにSpotifyとRdioが日本でもローンチするかもね、的な記事です。特に若年層に対して非常にすぐれたコミュニケーションができるソーシャルメディアであり、日本の音楽市場にポジティブな影響を与えるだろうとUniversal Music Japanの方が述べたようですが、この件に関するコメントはSpotifyからもRdioからも出ていません。どちらもアジアではまだ展開されていないサービスです。(追記:アジア展開の動きはありませす。)

ちなみに。台湾ではすでにKKBOXというストリーミングサービスが存在し、台湾のネットユーザーの3分の1が利用しているらしいです。日本初?のストリーミングサービスとなったLISMO unlimitedはこのKKBOXのストリーミング配信プラットフォームを利用しています。

「日本の音楽市場は、米国に継いで世界第2の音楽市場です。ここ数年で世界最大の音楽市場になるとも言われています。我々はアジア市場に進出する上で、自然に日本の市場に出て行きたいと考えました。KDDIと強力なパートナーシップを組むことで迅速なサービス展開が可能だと判断しました。課金やプロモーション、マーケティングの面でも通信事業者とのパートナーシップは重要で、LISMOブランドを展開するKDDIは理想的なパートナーでした。将来的に渡って他社と組まないというわけではありませんが、近い将来という意味ではKDDIと組んでやっていきたいですね」

出典:定額音楽配信「LISMO unlimited」開始、アジアに広がるKKBOX

とKKBOX設立者で、CEOのChris Linが語っている通り、通信事業者とのパートナーシップは非常に大きな鍵を握っていると思います。というのも音楽に金を払うという心理的な障壁を下げないといけない、あるいは音楽はお金を払うものだという意識をもってもらうために(それが必要かどうかは知らん)、ここはもうモ●ゲーよろしく積極的にMAKIAGETE、通信事業者との提携は非常に効果的だと思います。実際SpotifyはスウェーデンでTeliaと提携しています。日本の場合、なんせ着うたフルが315円~525円程度と今思えば頭ぶっ飛んで強気プライスだったことを思い出すとイケるんじゃね!っていう気がするようなしないような。

2011年11月の時点で国内のスマートフォン利用状況は、10代はフィーチャーフォンが70.8%、スマートフォンが37.9%となっています。でもって20代はフィーチャーフォンが66.1%で、スマートフォンが57.4%(出典:NTTアド調査、10代・20代の携帯・スマホ利用傾向が明らかに)。iPhone5発売以降はどうなんでしょうね。今若い人は皆スマートフォンな気がします。

ストリーミングサービスというのはスマートフォンじゃないと中々やりづらいでしょうし、LTEでストレスなく通信できるし、Facebookユーザーも増えたしタイミングとしては結構良いのではないでしょうか。ただしソーシャルメディアネイティブな人たちは音楽は無料で聴けちゃうネイティブでもあって、そこに対してどうのようにアプローチすれば音楽に金を払ってくれるのか、サービスを使ってくれるのかという議論は中々見えてこないのが恐いですね。通信事業者との提携、大物アーティストの配信など、が単純に思いつきますが、それだけで大丈夫かいなと思います。通信事業者との結びつきが強くなり、その通信事業者の端末しか利用できないってのも単純に機会損失かなと思いますが。

まぁ 、とにかくこれから市場を作っていく意味でも若年層にいかにして使ってもらうか、そこが大事ですね。私に具体案はありません。

参考記事
Spotifyで加速する世界照準の音楽ビジネス
通信事業者と音楽サービスプロバイダの提携関係:長期の連携か、短期で別れるか

Sony Music Unlimited

そういえばSony Music Unlimitedなんてのもありました。使いました?クソですよね。ブツブツ文句言いながら何とか利用開始して30日間で止めました。何がクソって使うまでがクソですね。30日間の無料体験キャンペーン中なので、試しにやったのですが。ちなみにデフォルトで30日を過ぎると課金されるので、注意(2012年7月当時。今は知りません)。

Spotifyと比べると何ら優位性はなく、同じ値段でこっち使う人ってマゾかソニー製品に囲まれて生きてる人だと思います。やるきあんの?とりあえず再設計したほうが良いのではないでしょうか。余計なお世話ですが。

Spotifyも月額1480円なんですかね。そうなるんだろうなぁ。Spotifyに関しては日本でも無料プランで利用できるのかというのは気になる。違法ダウンロードに勝つには、まずはフリーしかないんでないの。ってかストリーミングサービスで一番被害受けるのTSUTAYAだと思うんだけど…あれ?そうでもない?

(追記)

ソニーの「Music Unlimited」、980円/30日間に値下げ。音質はAAC 320kbpsに対応

このような報道がありました。他のストリーミングサービスに動きを見て変えてきたのでしょう。今後この値段帯が軸になってくると思います。

MySpaceの復活

Myspace

MySpace、リニューアルしましたね。使いました?今のところあんまりって感じです。まだわかってないだけですね。デザインは非常に素晴らしいと思います。レスポンシブウェブデザイン、ビッグビジュアル、横スクロール、とりあえずIE切り捨てなどトレンドを押さえてます。Facebookとの戦いを止め音楽に特化したニッチ狙いのソーシャルメディアというのもトレンドですね。SpotifyとFacebookとPinterestを混ぜあわせた感じです。
新しいMySpaceで一番素晴らしいのはミュージックプレイヤーですね。”MIX”ではプレイリストを共有することができます。しばらくBGMには困らなそうですね。また再アクセスすると前回再生していた曲が、その場所から再生できるのは魅力的です。ちょっとビックリしますけどね。

まあそのへんはMashableに記事があるのでそちらをご覧ください。
The New MySpace: Music Meets Social, Done Right

で、このMySpaceが日本で盛り上がるか、と言ったらまぁ無理でしょうね。音楽に特化するということは、前も書きましたけど、音楽に特化してしまうからアクティブにならないわけで。ぜってー無理でございます。

そもそも前のMySpaceってどれくらいのユーザー数がいたんでしょうか。作っただけで放置ってのが結構多かったように思います。アーティストもアーティストで、とりあえずMySpace作ったけど「これって意味あるの?」状態だったのではないでしょうか。知らんけど。

そもそもアーティストに関しては、ウェブ上で自分をアピールする場所を作ってもそこに動員できていないから意味ないし、動員の方法が貧相っていう根本的な問題がありますが、これは次に。

参考記事
SNS経由で告知するということ
音楽SNSって音楽に特化してるからつまらないんじゃね?

正直言って、音楽サービスの機能なんてもう目新しいものはありません。問題はそこではなくて、音楽を日常に組み込めるか、ということです。音楽を音楽の文脈だけで完結させないってのはこの日本において鍵になるのではないかと思います。

(追記)
また新しいMySpaceはモバイルでどんな体験を提供してくれるのか、かなり気になるというか心配というか。友人との交流であればTwitter・Facebookに勝てないし、そもそも土俵が違う。音楽を聴くことに特化するのであればSpotifyなどの専用アプリで良い。モバイルでは何にフォーカスするのか、注目したいです。

(追記)
佐久間正英氏 × 榎本幹朗氏 特別対談 第二弾 【前編】

こちらの記事で

榎本:まずは洋楽からだけでも新しいメディアを導入したい主旨のことを、おっしゃっていました。ただ、そこでも申し上げたんですが、日本では、洋楽だけで成功したメディアはないんですよ。ナップスターも洋楽メインで厳しい思いをしましたし、僕の好きなInterFMも洋楽中心なので経営はずっと厳しいです。日本のMTVも、当初洋楽中心だったため、邦楽中心のスペースシャワーには適いませんでした。

と榎本さんがおっしゃっていますが、僕は洋楽と邦楽を混ぜたところでたかが知れていると思っています。結局それでは既存の音楽好きしか集まらない上に、音楽メディア自体の力を弱まっている以上、それは厳しいだろう、と。

ーーアメリカではミリオンが今でもふつうですね。

榎本: アメリカって売上は下がっているんですが、ダブルミリオンやトリプルミリオンが今もガンガン出てくるじゃないですか? あれって逆に言うと一部の上流階級のミュージシャンの作品しか買ってもらえないということなんですよね。

向こうのCDはウォールマートが一番売っています。車で買い出しに行く途中に、ラジオからアデルがかかって、ウォールマートについたら『21』がドカッと山積みされていて、それをみんながカートに入れて買っていくという仕組みです。究極のショートヘッドですね。ロングテール型のPandora経由で、ようやくミュージシャンの中堅層にお金が流れるようになってきたのです。

つまり、多様性のすばらしさは日本の方が残っているのかもしれないんです。しかし、日本の方は、ドンと売れるものがない。するとまとまった制作費が取れなくなり、最高のクオリティのスタジオワークが残しにくくなっているわけです。日本とアメリカを比べると、両極端に分かれてしまっているのかな?と思います。

ですから、新しいメディアをやるんだったら洋楽プラスちょっとでもいいから邦楽を入れないと成功しないという現実があります。

J-WAVEが出てきた頃って、FMは洋楽をけっこう流していて、僕なんかそれを聴いて、音楽の世界に行きたいなと思った世代なんですけど、洋楽多めで、そこに邦楽を混ぜるのも、すごくかっこよかったと思うんですよね。負けてないぞというのが伝わってきました。
世界第二位の市場があるってのは全然追い風ではないくて、業界としては新しいビジネスモデルをそろそろちゃんと構築しない死ぬよ的なところまでキテるように思いますけど。中の事情を知らないので何とも言えませんが。

ウォルマートでCDを購入するというのは面白いですね。こちらの記事とは文脈が少し違いますが、日常の中に音楽との接点を作っていく、まず見せる聴かせるというはかなり重要なポイントだと思います。

国内の音楽サービス

昨年末リニューアルしたBeatroboフランスで開催される音楽ビジネスカンファレンスMIDEMに参加することが決定しています。日本初のサービスとして注目でしょう。

また昨年夏にリリースしたiPhoneアプリ、nana。歌のインスタグラムといったところでしょうか。こちらは少し毛色が違い、歌を投稿するというもので、人によってはハードルが高くなっています。聴くだけという人もいるでしょうが、インスタグラムの動画版Viddyのように、試聴に一定の時間がかかるというはネックかもしれません。

レコチョク、J-POPを中心とした月額980円の定額制聴き放題サービス3月スタート や NTTぷらら、定額制の音楽配信「ひかりTVミュージック」を3月開始、レコチョクと協業 といった報道があったように、レコチョクも海外サービスの日本参入に対抗、音楽ビジネスの変化に良く反応しています。

DeNAがスマホ向け音楽サービス「Groovy」展開へ–新ロゴも披露 という報道は結構話題になってましたね。一番香ばしいです。どういったものなのか現状では全くわからないので何とも言えません。音楽を聴くサービスは競争が激化しそうです。
好みの楽曲を自動で配信、フェイスがインターネットラジオサービス「FaRao(ファラオ)」開始 という話もありますが、音楽サービスのマーケティングってどうなってんだろうねというのが正直なところ。コアな音楽ファンでもストリーミングサービスの存在を知らないなんてことが結構あり、最大の難関である「認知」が全然越えられてないじゃんって感じですね。


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