TAIDAL

ゴシップサイトTMZのKanye West Splits with Jay-Z’s Tidal Over Money Disputeという記事が波紋を呼んでいる。記事によるとJay-Z(ジェイZ)がオーナーを務める音楽ストリーミングサービスTIDALとKanye West(カニエ・ウェスト)との間で金銭問題が生じているという。

TMZが入手した情報によれば、Kanye West側はTIDALに対し契約違反を訴えている。Kanye Westの弁護士はKanye WestとTIDALの契約が解消されたと主張。両者の弁護士はこの問題を解決しようとしたが失敗、Kanye West側は再び契約終了を宣言している。

また、Kanye West側はTIDALに対し、300万ドル(約3.3億円)の支払いを要求している。これは、TIDALがKanye WestのアルバムThe Life of Pabloを独占配信したことによって、新たに150万人のユーザーを獲得したことのボーナスだという。300万ドルの中にはミュージックビデオに契約についても含まれているようだ。

一方のTIDAL側は、認識と違う部分があると主張。カニエとの契約は継続されており、別の音楽配信サービスと契約するようならカニエを告訴するとしている。

TIDALは定額制の音楽配信サービス。TIDAL Premium($9.99/月)とTIDAL HiFi($19.99/月)の2プランが用意されており、高音質での配信が売りだ。今年1月には、これまでの44.1kHz/16bitのFLAC形式に加え、96kHz/24bitのMQA形式での配信もスタートしている。

元々は2014年にノルウェー/スウェーデンの企業Aspiro ABがイギリス、アメリカ、カナダでスタートさせたブランド。2015年にJay-Zがオーナーを務めるProject Panther Bidco Ltd.に買収された。Jay-Zのほか、Beyoncé、Rihanna、Kanye West、Nicki Minaj、Daft Punk、Jack White、Madonna、Arcade Fire、Alicia Keys、Usher、Chris Martin、Calvin Harris、deadmau5、Jason Aldean、J. Coleらもオーナーで、アーティストがサービスを所有することで音楽の価値を取り戻すと主張していた。

しかし経営は難航。経営陣の入れ替わりが激しく、一時Appleが買収に乗り出すという噂もあった。今年1月にはソフトバンク傘下の通信事業者Sprintが株式33%を取得している。

Photo : Watch the Throne: Jay-Z & Kanye West December 2011
Photo by U2soul

TMZの別記事KANYE WEST Tidal Taught a Lesson … NO MORE EXCLUSIVE MUSIC DEALS!!!によれば、カニエはTIDALに加えてApple Music、Spotifyといったその他音楽ストリーミングサービスとの契約や独占リリースにも興味がないという。カニエのアルバムThe Life of Pabloはリリースから約1ヵ月半はTIDAL限定で配信されていたが、その後各プラットフォームにも提供されている。カニエは新たな作品がリリースされた際は、できるだけ多くのプラットフォームですぐに楽曲を配信する考えだ。

Kanye Westは以前ライブでDrake(ドレイク)の“Pop Style”を披露した際に、TIDALとAppleを非難していた。“Pop Style”はApple Musicで独占配信されたDrakeのアルバムViewsの収録曲で、当初発表されたシングルバージョンの“Pop Style”にはThe ThroneとしてKanye WestとJay-Zが参加していた。しかしTIDALとAppleが揉め、アルバムに収録されたバージョンはDrakeのみがラップしている。

確かに特定のサービスと契約することで大きな金は手に入るかもしれない。プラットフォームはユーザーを獲得できる。マーケティングの戦術としては理解できるが、ファンの気持ちが考えられているかは疑問が残る。The Life of Pabloリリース時も批判が噴出していた。同じようにTIDAL独占配信でリリースされたJay-Zの新アルバム4:44にも同様の反応が見られる。独占配信はライトファンの獲得においては機会損失にもなるだろうし、違法な方法で聴くリスナーも増えるだろう。実際、 MUSIC BUSINESS WORLDWIDEの記事よれば、Jay-Zの新アルバム4:44は3日間で約100万回の違法ダウンロードが観測されているという。

ちなみに、Snoop Dogg(スヌープ・ドッグ)はTIDALに加入しておらず、よくわからなかったので仲間からブートレグを送ってもらったことを認めている(内容は褒めている)。

またMark Ronson(マーク・ロンソン)はTIDALで聴くことができなかったと怒りのツイートをしている。

TIDALは現時点のところ日本では利用できない。蚊帳の外だ。

Reference

Latest