Photo by Shervin Lainez

1999年にリリースされた1枚のアルバム『American Football』。今聴いても全く色あせず、新鮮で輝いて聴こえるこのアルバムを作ったのは、現在Owenとして知られるMike Kinsella(マイク・キンセラ)、ドラマーのSteve Lamos(スティーブ・ラモス)、ギタリストのSteve Holmes(スティーヴ・ホルムス)によるバンド、American Football。今日のエモ、ポストロック、USインディーを語る上で避けては通れない、高い芸術性をもったバンドだ。

そのAmerican Footballが1stと同名の新作アルバム『American Football』をリリース、さらに来日公演がHostess Clubプレゼンツとして東京と大阪で実現した。東京は6月6日(火)恵比寿Liquidroom、6月7日(水)赤坂Blitzの二公演、大阪は6月9日(金)Akasoにて一公演が行われる。詳細はジャパンツアー公式サイトをチェック。

American Footballは97年、Mike Kinsellaを中心にイリノイで結成された。しかし98年に『American Football EP』、99年に前述のデビューアルバムをPolyvinyl Recordsからリリースするとすぐに解散してしまう。そもそもアルバム収録前から解散は決まっており、ツアーも行われないというあっさりした幕引きだった。

その後マイク・キンセラはOwenとして成功し、ラモスとホルムスは音楽から離れた。その間American Footballの魅力は15年をかけて、じわじわと世界に浸透。アルバムは売れ続けた。だが再結成にはいたらない。バンドは当時まだ自分たちの人気が本物であると気がついていなかったためだ。

American Football – Never Meant
バンドを象徴する「家」が登場する美しくエモーショナルなビデオ

しかしホルムスが自宅でライブ音源を発見したことが状況を変える。

ホルムス:自宅で、AMERICAN FOOTBALLの初ライヴの音源を見つけたんだ。「The 7’s」もそれに入ってた。そのファイルをマイクとマットに送った。POLYVINYLのウェブサイトで、無料配信でもしたら面白いんじゃないかとひらめいてね。案の定、マットは俺の提案に食いついてきて、「ライヴ音源のフルバージョンを送ってくれ!」とせがんだんだ。リリース15周年だったから、その中でも最高の15曲を選ぶことにした(実際、デラックス盤に追加収録されてるいのは10曲)。そうこうしてたら、デラックス盤の再発が決まって、俺がライナーノーツを書く羽目になった。最初はメンバー全員で書くはずだったけど、ラモスとマイクは俺が書いたものを読んで、「もう十分だろ」って、逃げやがったんだ。バンドをやってた頃に撮った写真も何枚か提供したよ。LP盤のレコードスリーブとリイシューされたジャケットの裏表紙に使われてるのは、俺の写真だよ。

出典:江盛バイバルのエモエモ講座 AMERICAN FOOTBALLが語るバンド史原文 Noisey

2014年、デビューアルバムが再発が発表されると多くのファンが世界中にいることが可視化された。リリースされるとPolyvinyl Recordsのサイトがダウンしたという。これが再結成を後押しした。彼らはAmerican Footballにファンがいることに気がつく。Webster Hallでの再結成ライブはすぐにソールドアウト、以降は各地のフェスに出演。15年前のアルバムのツアーを行うというなんともエモーショナルな展開となり、2015年には来日も果たしている。

ラモス:サーバーがダウンしたときは、「一体何が起こったんだ?」って感じだった。再結成にはずっと反対してたんだけど、あの事件があって初めて、「AMERICAN FOOTBALLは、俺たちの想像以上に特別な存在なのかも」って気付いたんだ。ニューヨークのウェブスターホールでのライヴが完売したのにはビックリした。金曜日のチケットは、発売開始から30秒で完売した。それで運営側から、「追加公演しますか?」と聞かれたから、俺たちは「もちろん!」って即答した。土曜日のチケットも3分で完売した。その後、彼らは3日目の公演もブッキングしたがった。とんでもないことになっていると確信したね。

出典:江盛バイバルのエモエモ講座 AMERICAN FOOTBALLが語るバンド史原文 Noisey

2014年のNY・Webster Hallでの再結成ライブ

2014年のNY・Webster Hallでの再結成ライブ

ホルムス:再結成して初めてのシャンペーンでのライヴは、俺にとっては10年ぶりのステージだった。しかも、2000人もオーディエンスがいて、みんな声を出して歌ってた。すごくクールな光景だった。俺みたいな音楽バカばっかり集まってたんだ(笑)。俺自身も、あのオーディエンスの中にいるような感覚だった。そういえば、俺もDRIVE LIKE JEHUの再結成ライヴで、彼らの曲を歌ったよ(笑)。

江盛バイバルのエモエモ講座 AMERICAN FOOTBALLが語るバンド史原文 Noisey

そして2016年8月、バンドは新作『American Football』をリリースすることを発表。同年10月、17年ぶりのスタジオアルバムがリリースされた。マイク・キンセラのOwenとしての活動と再結成ツアーを経た今作の楽曲の音像はよりクリアで、タフな印象を受ける。ベースにマイク・キンセラのいとこ、Nate Kinsella(ネイト・キンセラ)が参加していることも寄与しているだろう。美しく懐かしいアルペジオ、Owenとしての活動を通して成熟したマイク・キンセラのボーカルは温かく、American Football節は健在。トランペットを使用した楽曲は少ないのはやや寂しく思ったが、ラスト “Everyone Is Dressed Up” を聴けばそんな気持ちもどこへやら。

曲は一見して前よりも直球になっていると思う。前よりも削ぎ落とされているんだ。前のアルバムでは殆ど自分たちのそれまでの経過をそのまま記録するつもりでやっていたし、自分たちが解散することも分かっていたから、短期間に一気にレコーディングしたような感じだった。今回はもっと自分たち自身で曲を分かった状態でレコーディングに臨んだから、より効率的になったんだと思う。

出典:【インタビュー】アメリカン・フットボール17年振りの新作で完全復活!エモ界のレジェンドの現在とは?

American Football – I’ve Been So Lost For So Long

4月23日現在、来日公演のチケットはまだ入手可能。
なによりもリアルタイムでこうしてAmerican Footballに会えることが嬉しくてたまらない。この機は逃せない。


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